財務省の「日本の財政関係資料 令和2年7月」を読んでみました。財務省の財政についての認識は根本的に間違っています。なぜ、財務省が日本の財政が危機的だと考えているのかはよく理解できました。何が間違っているのかをこの記事で解説します。
この資料の構成は以下とおりです。
- 第1部 我が国財政について
- Ⅰ.我が国財政の現状
- 1.令和2年度一般会計予算
- 2.一般会計における歳出・歳入の状況
- 3.公債発行額、公債依存度の推移
- 4.普通国債残高の累増
- 5.国及び地方の長期債務残高
- 6.普通国債残高の増加要因
- 7.平成2年度と令和2年度における国の一般会計歳入歳出の比較
- 8.OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係
- 9.国民負担率の国際比較
- 10.OECD諸国の政府支出及び収入の関係
- 11.財政収支・プライマリーバランス対GDP比の推移
- 12.財政収支の国際比較(対GDP比)
- 13.プライマリーバランスの国際比較(対GDP比)
- 14.債務残高の国際比較(対GDP比)
- コラム①.我が国の資産の見方について
- Ⅱ.財政健全化の必要性と取組
- 15.公債依存の問題点
- 16.低金利下における財政運営
- 17.我が国の財政健全化目標とその変遷
- 18.財政健全化目標に用いられるストック・フロー指標の関係
- 19.債務残高対GDP比の安定的引下げとフロー収支の改善の関係
- 20.国・地方の公債等残高対GDP比の推移 ・
- コラム②.我が国の国債の保有及び流通市場の状況について
- 21.我が国の財政健全化に向けた取組
- 諸外国の財政健全化目標
- Ⅲ.各分野の課題
- 23.社会保障分野
- 24.社会保障以外の歳出分野
- Ⅰ.我が国財政の現状
- 第2部 令和2年度予算
- Ⅰ.令和2年度予算のポイント 他 ・
- Ⅱ.新型コロナウイルス感染症緊急経済対策 他
- (参考)会計情報とPDCAサイクル
- Ⅰ.国の貸借対照表
- Ⅱ.一般会計と特別会計
- Ⅲ.PDCAサイクル
第一部 我が国財政について
この資料は、家計簿の発想でまとめられています。一般家庭では働いて給与を収入として得、衣食住等の費用を支出します。住宅を購入する場合には、生涯で返済できる範囲で住宅ローンを組んで、住宅を取得し、毎月返済して、一生のうちには完済します。
多くの国民は家計簿発想の収支で生活することに問題はありませんし、正しい行動といえますが、中には投資物件を購入し家賃収入を得る人もいます。この場合、家計費と事業費は明確に分けて考えなくてはなりません。家計簿は収入の範囲で支出を行います。ある支出が増えた場合には、他を節約して収支を調整します。事業収支の場合には、物件の取得予定額、返済期間、投資物件の原価償却期間などから事業計画をたて、銀行などから資金を調達し、投資物件を購入し、家賃収入などから返済を行います。事業収入から事業関係経費を差し引き残りは利益となりますが、単年度ではなく、長期の収支で考える必要があります。返済期間、原価償却期間は通常相違しますし、物件が古くなると収入自体も減少していきます。投資物件の寿命でトータルの収支を考える必要があります。将来は常に不確定ですが、大きな過ちを犯さない限り、投資に伴い収益を獲得することは可能です。
個人事業主であっても長期の計画に基づき事業収入を考える必要があるのに、財務省の予算には、長期的視点が欠けています。なにより、家計でいう生活費と事業費(消費と投資)の区別がされていません。集計には誤りは無いと思いますが、ただ歳入と歳出をみてたいへんだと訴えています。
Ⅰ.我が国財政の現状
1.令和2年度一般会計予算
(1)歳出内訳

(2)歳入内訳

財務省のコメント:本来、その年の歳出はその年の税収やその他収入で賄うべきですが、令和2年度当初予算では歳出全体の約3分の2しか賄えていません。この結果、残りの約3分の1を公債金すなわち借金に依存しており、これは将来世代の負担となります。
上記の認識は全く間違ってします。
- 単年度で考えるべきではありません。
- その年の歳出はその年の税収やその他収入だけで賄う必要はありません。
- 自国通貨国債である公債金は税金で返済する必要はありません。
- 当然ながら、将来世代の負担にはなりません。
- 政府には、個人や企業と違い特殊性があります。政府には寿命がないこと。通貨を発行できること。このことを考慮せず家計簿発想で財政を考えてはいけません。
国債には償還期限があるため税金で返済しなければならないと勘違いされている方が多くいますが、償還期限のきた自国通貨国債は新たに発行する国債で償還すればいいだけです。したがって、累積発行済み自国通貨国債と対GDP比に意味はありません。外貨通貨国債の場合は新たな国債発行による資金調達ができなくなることがあるので、その場合には 対GDP比 には意味があるのかもしれません。国債発行により調達した資金で支出する場合、実態経済に需要が生まれ、通貨量が増大します。多すぎる支出がされた場合には物価が上昇します。過度に物価が上昇し過ぎない範囲になるよう政府支出の量を調整する必要があります。この際に調達のために発行される国債は適正な量といえます。国債発行により資金調達し、支出することは通貨発行により資金供給したことと同じことになります。デフレ下においては大幅な支出拡大が可能です。過度に物価が上昇してきた際は、金融引き締め、政府支出の縮小、増税などにより調整が必要になります。また、償還のために発行させる国債の発行には、制限はありません。
政府の資金調達の方法には、中央銀行が国債を引き受ける場合、市中銀行が引き受ける場合、政府が自ら通貨を発行する場合があります。どの方法であっても実質的に同じことになります。日本では国債を中央銀行が直接引き受けることを制限しているので、誤解が広がっていますが、本来は 国債を中央銀行が直接引き受けるのが 中央銀行 の役割のひとつであり、合理的な方法です。制限するおおきな理由はありません。占領下に成長を阻害するために制限した法律が、いまも残っているだけです。この制限は撤廃すべきです。
2.一般会計における歳出・歳入の状況
財務省 コメント :我が国財政は歳出が税収を上回る状況が続いています。その差は借金(建設公債・特例公債)によって賄われています。


経済規模に応じた適切な量の自国通貨国債の発行は政府の収入と同じ意味合いになります。適正な量とは、物価が過度に上昇しない範囲の量です。
政府の歳入は税収、その他の収入、自国通貨発行収入になります。そもそも歳入と歳出は均衡しています。
少なくてもデフレ下では適切な量が供給されていない、政府の国債発行による支出は少なすぎるということを意味します。事実として令和2年に大幅に国債発行により支出を増やしましたが、金利はまだ上昇しませんでした。まだ、適正量の支出が行われていないということです。 使えるお金はあるのに 使っていない状態です。使えるお金はあるのに、使うべき時に使わない人を世間では「ケチな人」といいます。財務省でこの資料を作っている人、財務省の説明を信じてしまった人は、本人はそのつもりでなくても 「ケチな人」 になっています。
適正な量 以上の通貨が供給された場合、金融引き締め、政府支出の抑制、増税などにより実体経済の通貨量を減らすことは可能です。ただし、これは一時的な手段であって、長期的視点にたって成長投資により 適正な量自体を拡大させ、均衡させることが肝要です。 間違っても適正な量自体を縮小させる政策をとるべきではありません。「改革」とか、「無駄削減」とか、「規制緩和」とか、「自由化」とかは、適正な量自体を縮小させる政策になりかねないので慎重な判断が求められます。
3.から6.まではすべて借金が増えて大変だということを示そうとしている資料ですが、これは日本が外貨建ての国債を発行していたら大変だということであって、自国通貨国債だけを発行している我が国では問題はありません。不要な間違った前提で説明を続けていますので省略します。
7.平成2年度と令和2年度における国の一般会計歳入歳出の比較
この章では社会保障が増えて、それを特例公債で補っていることが問題だということを説明していますが、 特例公債 自体が政府収入の意味合いがある以上なんの問題もありません。
8.OECD諸国における社会保障支出と国民負担率の関係
財務省 コメント :我が国は諸外国と比べ、給付と負担のバランスが不均衡の状態に陥っており、制度の持続可能性を確保するための改革が急務です。
財務省 は、社会保障費が増大し、特例公債でこれを賄っていると考え、これを 社会保障費 とGDP比、特例公債とGDP比をOECD諸国と比較し、 給付と負担のバランス が不均衡だと言っています。 自国通貨国債を発行している国 においては、 特例公債自体が政府収入と同じ意味合いになるので、 社会保障費が増大し、特例公債でこれを賄ってい たとしても何の問題もありません。むしろ社会保障費の比率が高いのは他の支出が少ないのではないかと考えるべきです。また、自国通貨国債を発行している国と、外貨通貨国債を発行している国を比較することに何の意味もありません。
9章、10章も無意味な説明ですので省略します。
11.財政収支・プライマリーバランス対GDP比の推移
財務省 コメント :我が国の財政収支とプライマリーバランス対GDP比は、赤字が続いています。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の支払いにあてられる費用)を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標です。
プライマリー・バランス が意味があるのは、外貨通貨国債を発行している国であって、自国通貨国債を発行している国においては意味がありません。そもそも必ずバランスします。
自国通貨国債を発行している国の歳入と歳出
- 歳入:税収、その他収入、 自国通貨国債 発行収入
- 歳出:基礎的財政収支対象経費、国債償還費、利払費
12章、13章、14章、コラム①も 自国通貨国債を発行しているわが国には意味がない説明です。省略します。
Ⅱ.財政健全化の必要性と取組
15.公債依存の問題点
財務省 コメント :我が国では、受益と負担の均衡がとれておらず、現在の世代が自分たちのために財政支出を行えば、将来世代に重いツケを回すことになります。
第Ⅰ部で説明してきたとおり我国に財政問題は存在しません。将来世代に重いツケを回すこともありません。間違った認識で取り組みを作っているのですべて間違った取り組みになっています。このことにより過去20年以上にわたって経済を停滞させ、国を危うくしています。この誤った認識を流布することこそが問題です。
受益と負担のアンバランス
財務省コメント:我が国では、社会保障関係費の増大に見合う税収を確保できておらず、給付と負担のバランスが不均衡の状態に陥っており、制度の持続可能性を確保できていない。
社会保障関係費の増大は税収だけで確保する必要はありません。 給付と負担のバランスが不均衡ということもありません。
財務省コメント: また、公債に依存する緩い財政規律のもとでは、財政支出の中身が中長期的な経済成長や将来世代の受益に資するかのチェックが甘くなりやすい。
公債が自国通貨国債である場合には不要な心配です。
我が国の財政を家計にたとえると(財務省)

政府の財政を家計に例えるのは乱暴な説明ですが、この説明に合わせるとしたら家計簿で考えるよりは個人事業主で家賃収入がある場合で考えたほうがより実態に近いのではないでしょうか。少なくても消費と投資を分けないのは大きな問題です。


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