政府の支出に伴うお金の流れは、①通貨の発行、②政府支出、③税金による回収、④通貨の消滅という流れになります。お金が債権債務の創造によりできている以上必ずこの流れになります。これが「税金で政府の収入を確保し、政府は支出を行っている。」と多くの人が間違った思い込みをしています。この間違った認識により多くの弊害が生じています。この記事では政府の支出に伴うお金の流れについて解説します。
記事の概要
1.正しい認識によるお金の流れ
(1)通貨の発行
政府は政府債(国債)を発行し、資金調達を行います。政府の調達するお金は中央銀行預金になります。国債の発行により通貨として発行されるお金の準備を行います。(政府による資金調達の記事を参照ください。)

(2)政府支出
政府は調達資金に基づき、政府サービスの提供、インフラ投資の発注に伴う支払により、実態経済にお金を提供します。政府の支出の制約は国全体の生産する力になります。具体的には物価が上がりすぎない範囲です。政府の支出により支払われるお金こそが、政府が調達したお金を実態経済に供給させる方法です。政府支出に伴い、政府負債も増加します。

(3)税金による回収
政府支出によりお金は実態経済に流通しますが、政府の考える計画と違う方向にお金が流れ、修正が必要だったり、所得格差が拡大して調整が必要な場合、税金による回収の仕方を変更することによりお金の所在を調整することが可能です。これにより社会の歪みを調整することが可能です。また、回収する税金の大きさにより景気を調整することも可能です。

(4)お金の消滅
税金により回収されたお金は、消滅します。同時に政府債務も同額減少します。政府の支出に伴うお金の流れは①通貨の発行、②政府支出、③税金による回収、④通貨の消滅となり、この流れが繰り返され、政府は毎年支出を行うことができます。政府は発行したお金をすべて回収する必要はなく、発行したお金と消滅させるお金の量は、以下の関係になります。
- ①通貨の発行>④通貨の消滅 経済発展の前提
- ①通貨の発行<④通貨の消滅 経済衰退
- ①通貨の発行=④通貨の消滅 経済停滞

2.間違った認識のお金の流れ


多くの人が「政府は税金を徴収し、そのお金を使うことにより政府支出を行っている。」と思っています。しかしながら、政府は税金で得られたお金を支出にあてているわけではありません。そもそも税金が納付されるのは翌年度です。手続き的には政府債である短期証券を発行し、お金を調達しお金を支出していますが、政府債である国債で行ったとしても同じことです。短期証券だから発行した分を税金を回収したお金で償還していると考えてしまいますが、長期証券であれば、同額を償還する必要はありません。
この流れの元々あった実態経済の通貨はどこからきたのでしょうか? そもそも間違っています。
経済成長のためには「発行額>償還額」でなければなりません。なぜなら経済成長すると実態経済に必要なお金の量は多くなるからです。発行したお金と同額を償還してしまっては実態経済のお金は増加せず、お金が不足してしまい、デフレーションに陥ります。この実態経済に必要なお金は返済により減少(発行量<償還量)させてはダメな債務になります。実質的に返済不要な政府の債務ということになります。
3.なぜ間違ってしまうのか。
政府の支出を家計の感覚で考えてしまっているからです。家計や個人であれは、支出を所得の範囲にすることは正しい行いです。また稼ぐことができる間に返済しなければなりません。
政府は個人や家計と決定的に相違している点があります。
- 通貨を発行できる主体であること。
- 政府には寿命はないこと。
政府のこの相違点をよく理解し、政府の通貨発行、政府支出を考える必要があります。そのためにはまずお金について正しく理解する必要があります。
- 政府の支出は税金によりされているわけではない。
- 政府の負債は、経済成長により拡大する。
「政府は収入の範囲で支出しなければならない。支出は税収の範囲でするべきだ。」、「政府の債務は将来税金で返さなければならない。債務を増やしてはいけない。」これを正しいと信じ込んでいる人たちが多くいます。経済学者も、政治家も、マスコミも、国民も。ほとんどの人が信じています。これらの間違いはお金について正しく認識できていないことが原因です。
4.間違った認識による間違った考え
税金が政府の収入で、税収以上に使ってはいけないと考えると、以下のように考えます。
- 使えるお金は限られているので節約しないといけない。
- 効率化してお金を節約しないといけない。
- 制度を見直して、お金がかからない仕組みにしないといけない。改革だ!
- 規制を緩和しないといけない。自由化だ!
- 増税できるところからはもっと、徴収しないといけない。
この間違った認識により間違った経済政策が行われます。いまでも政治家や経済学者が言っています。
5.間違った考えによる弊害
以上の間違った考えによりなされてきたのが以下の政策です。
- 分割民営化(国鉄、電電公社、郵政民営化)
- 改革という名の改悪(行政改革・財政改革・社会保障改革・金融システム改革・経済構造改革・教育改革)
- 派遣社員の解禁
- 政府職員の非公務員化と民営化の推進、国家公務員数を削減
- 経済自由化協定
- 公共事業費の削減
- 社会保障費の削減
- プライマリーバランス黒字化目標 緊縮財政
- 消費増税 などなどなど。。。。。。。
経済成長が停滞し、国民所得が減少、国際的地位の下落。。。。
収支均衡させなければならないという前提で経済政策を考えると、ある支出が増加する場合には増税するか、他の支出を抑えなければならないと考え正しい経済政策を行えません。日本が20年以上に渡って経済が低迷している原因です。
- 毎年豪雨災害で亡くなっている人が多くでるのも緊縮財政で十分な防災投資を行ってこなかったからです。
- 非正規社員が増え、収入が低迷し、豊になれないのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 地方の人口が減少し、地方が衰退しているのも、緊縮財政で政府の間違った経済政策のせいです。
- 地方の医療体制が、脆弱化し、医師が不足し、病院も減少しているのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 地方の交通インフラの整備が進まず、産業が衰退してきたのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 教育費の補助が十分行われず教育の機会が十分に与えられないのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 大学の予算が減らされ、研究者が安定して研究できる環境に恵まれず、十分な研究が行われないのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 年金の受け取れる時期が遅くなり、受け取れる金額も減っているのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 建設会社が減少し、技術レベルも衰退し、工事ができなくなってきたのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
- 国内の農家が疲弊し、後継ぎがなく、農業人口が減少し、農業が衰退し、輸入に頼らなくては食べていけない構造にしたのも緊縮財政で間違った政策が行われてきたからです。
これらは、正しい経済政策を行えば防ぐことができ、豊かな社会を実現することが可能です。今の状況は間違った経済認識による人災といっても過言ではありません。
6.どうすればいいのか
(1)考え方
国民がお金について正しく理解し、政府のお金の流れについて正しく理解することで、方向を変更させることができます。
投資により生産する力を大きくし、収入を増やし、さらに投資を拡大し、生産する力を大きくし、さらに収入を増やしていく。この回転を景気を調整しながら回して経済を成長させていくことが大切です。
(2)具体的に実施すること
- 長期大型の具体的国土計画を策定し、毎年確実に実施していくこと。
- 研究開発投資予算の拡大
- 教育関係予算の大幅拡大
- 財政法を改正し、国債発行の制限を撤廃すること。
- 取りやすいところからとる税制から徴収目的を明確にした税制に変更
- 行き過ぎた民営化の見直し。本来公共事業として運営すべき事業は公共サービスに。
- 公共サービスで行うべき事業の国費負担の拡大と民間が行うべき事業の規制緩和の推進と経済安全保障の確保
7.まとめ
間違った経済政策を行ってしまう根本原因は、お金についての間違った認識から財政収支は均等でなければならないという間違った思い込みです。まして財政収支黒字化とは「①通貨の発行<④通貨の消滅 経済衰退」を目指すということです。この誤りは税収が先でその範囲で支出が行われなければならないという間違った思い込みのためです。
お金は債権債務の創造により生まれます。債権債務の創造により資金調達を行い、返済により消滅という順番になります。
正しくお金のことを理解できれが、以下について理解できるはずです。いままでの間違いに気づくはずです。(関連の記事を確認ください。)
- 政府の収入は税金ではありません。
- お金は債権・債務の創造から生まれます。
- お金は取引の際に利用されます。経済規模が大きくなると実態経済で必要なお金の量は多くなります。
- 政府は国債を発行して、お金を調達し、支出することによりお金を実態経済に供給します。
- 政府負債は経済成長に伴い拡大します。政府負債を拡大させなけば経済成長できません。
- 国債の償還は新規の国債で調達した資金で行うだけです。税金で返済する必要はありません
収支均衡させなければならないという思い込みにより、日本経済は停滞し、国民は貧困化し、外国からの経済的・軍事的脅威にさらされています。

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